傷跡
『いいなぁ杏奈は。仕事しなくても彼氏から遊ぶお金もらえて』
友達は、みんなあたしにそう言ってた。
でも充実なんて全然してなかった。
誰もいない部屋で一人きり。
帰りを待っていても光輝は寝るためだけにただ毎日帰ってくるんだ。
なにかが違う、ずっと…そう思ってた。
心のどっかにポッカリ穴があいてるみたいに足りない何かを考えるようになっていく。
光輝は酔い潰れて店で寝てしまう日もあるようになってたし、家で一人でいる時間がすごく苦痛になっていった。
ナンバーワンになってからの光輝は、そのトップをキープするために、前以上に必死で頑張ってたような気がする。
家にいる時もお客さんと電話したりするようになってて。
もちろんあたしはいい気はしなかったけど、何も言わないようにしてた。
でも、そんなある日――
ちょっとした異変に気付いたんだ。