傷跡
最近、光輝は今までよりも早く用意をして出勤しようとする日が増えた。
『何で最近早いの?』
だからなんとなく不思議に感じていたあたしは、ふと聞いてみた。
『あぁ、同伴同伴』
同伴?
あたしにはその意味がよく分からなかった。
『同伴ってなに?なにするの?』
『ん?客と店に入る前に飯食ったりちょっと店の近くで会ったりしてから一緒に店に出勤するってこと』
『ふーん』
そっかそっか…
って?
え?
なにそれ?
私は始めて知った“同伴”の意味に、少し疑問をもった。
『大丈夫だって。心配しなくても所詮客なんだから』
光輝はそう言うと、いつものように出勤していった。
あたしにはよく分からなかった。
いくら仕事とはいえそんなことをする必要があるのかって。
水商売を理解しきれていなかったあたしには分からないことが多すぎたんだ。