傷跡


そして―――

その日、夕方6時過ぎ。



やっと光輝は目を覚ましたようでリビングへと出てきてくれた。



でも、キッチンに立つあたしを見ても何も言わない。



まるであたしがいないみたいに素通りして、お風呂に入っていった。




我慢我慢。


ちょうど食事の用意も終わり、盛り付けたお皿をテーブルに並べると私はそう思いながら大きくひとつ深呼吸をした。




多分こんなことをしても…光輝は食べてくれないかもしれない。



いらないって言うかもしれない。




でも…


あんなにやつれた顔してるし…


体のためにもちゃんと食べさせなきゃ。



あたしはそう思いながら、光輝がお風呂から上がってくると、まるで何もなかったかのように普通のテンションで話し掛けた。



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