傷跡
『あ、光輝!ちょうどご飯できたから一緒に食べよう』
明るくそう話し掛けたあたしに、光輝は少しも反応することなく何も言わずに寝室に向かうと、リビングと繋がるドアをバタンと閉めてしまった。
イライラする。
何か言ってくれてもいいじゃん。
黙ったままで。
逃げるようにあたしを無視するそんな光輝の姿は、あたしの感情を逆なでしていった。
でも…
怒っちゃだめだ。
自分自身に何度も言い聞かせながら、あたしは黙って目をつぶった。
“あたしは頑張れる。あたしが我慢しなきゃ光輝はどんどん変わってしまうんだ”
何度も何度も…そうやって自分に言い聞かせたんだ。
と、その時――――
スーツに着替えた光輝が寝室から出てきた。