傷跡
『あ、光輝!せっかく作ったしご飯食べて行ってよ。なんか顔めちゃくちゃやつれてるじゃん…。最近ちゃんとご飯食べてないんでしょ?』
あたしが明るくそう言うと…
光輝は何も言わないまま黙ってあたしをジッと見つめた。
一分…二分もずっと。
なんだか少し怖かった。
光輝の目には色がなくて。
すごく冷たく感じたから。
『お前さぁ。バカなの?何なの?何がしたいの?こんなことして楽しい?俺に振り回されてさ。つーか昨日の女と俺、やったよ。お前と毎日ずっと寝てたあのベッドで…俺は違う女と寝たの』
『分かってるよ!』
あたしは…大声で叫んでいた。
分かってた。
知ってたよ。
でもそんなの…
光輝の口から聞きたくなかった。
あんな現場目撃しちゃったけど。
あんなごみ箱を見ちゃったけど。
でもね、
それでも…
光輝が“違う”、“勘違い”だって言ってくれたら…
あたしは事実と異なっていたとしても…
それを我慢して信じようと思えたかもしれないのに…