傷跡


『分かってるんだったらわざわざこんなことすんなよ!』




大きな怒鳴り声が部屋中に響く。




あたしは…


それでも我慢したんだ。





『もうそんなのいーからさ。ご飯だけ食べて行ってよ。せっかく作ったんだから』




あたしがそう言ってご飯をよそうために炊飯器を開けた時、光輝は勢いよくテーブルに並べていたたくさんの料理を、全部手で払いのけていった。




ガチャーンガチャンとお皿の割れる音が部屋中に響いていく。





なんで?



全身の力が抜けていくのが自分でも伝わってくる。



無気力になったあたしはその場に崩れ落ちるように座りこむと、溢れてくる涙を隠すように両手で顔を覆った。




心なんて…


なくなってしまえばいいのに。



感情なんてものがなかったら…何も考えなくて済むのに…。



悔しさも苦しさも苛立ちも全部とおり越してた。



ただ悲しくて。



悲しくて悲しくて。


どうしようもなかった。




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