傷跡


そして、さすがにそのままにはしておけなかったから、床に散らばった食器や料理を片付けると、すぐに実家に電話をかけた。




『はい工藤です』




お母さんの声を聞くと、なんだか少しホッとした。




『お母さん?杏奈だけど…今日から家に戻っていいかな?もう…光輝とは別れることにしたから』


『急にどうしたの?喧嘩でもした?』


『ううん、喧嘩なんかじゃないんだ。もう本当に別れるの。だから荷物とかもあるし手伝ってほしいから2時間後ぐらいに家に来てくれないかな?』




お母さんはそんなあたしのお願いを何も言わずに聞き入れてくれた。



迎えに行くから用意してなさい。



そう言って優しく電話を切ってくれた。




本当はまだ…別れたわけじゃない。


ちゃんと別れたわけじゃ。


でももう終わったも同然でしょ?


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