傷跡
『寿司でも食いに行くか。とりあえず車で待ってるから』
最後の荷物を手にしたお父さんは、そう言うとお母さんと先にエレベーターへと乗り込んでいった。
誰もいない部屋。
静まり返る空気。
愛でいっぱいにする。
そう思って始めたこの愛の巣での同棲生活は、
今…
この瞬間に終わりを迎えようとしている。
最後に何度も振り返りながら玄関で靴をはいたあたしは、切ない胸の痛みを感じながら、何もついていないシンプルな鍵で玄関の扉の鍵を閉めたんだ。
置き手紙も何もない。
カシャン…
鍵は、
玄関のポストにそのまま落とした。