傷跡


唯一光輝がよく話すのは、小学校三年の夏にオーストラリアに行ったってことぐらいだった。



光輝はひとりッコで、ずっと兄弟が欲しかったとも言ってたっけな。



でも、考えてみたら、あたしはそれ以外何も知らなかった。




光輝のこと分かってると思ってたけど…


全然なにも知らない。


分かってなかったんだなって。




初めて光輝に会った時、あたしは何かを感じたんだ。


何かをかかえてる影。

時々見せる淋しげな目。



だから光輝に吸い寄せられるように惹かれていった。



何でこんなに寂しそうな目をするんだろうって。


何でそれなのに無理して笑ってるんだろうって。



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