傷跡
“居場所”―――
最後に光輝が電話で言っていた言葉を思い出した。
光輝が求めていた居場所という意味は何だったのか。
あんなに必死でナンバーワンを維持し続けていたのに。
そのためにずっと頑張っていたのに。
こんなにもアッサリと。
そのナンバーワンを簡単に捨てられるんだろうか。
そして誰も…
あたしでさえも。
本当の光輝を知らなかった。
光輝は生まれ育った地元の話なんかもほとんどしなかったし、家族の話も聞くことはなかったから。
初めて気付いた。
分かったふりしてただけで…
あたしは何も分かっていなかったんだよね。
何であの時光輝から離れてしまったんだろう。
あたしは…
ズルイ逃げ道に走ったあの時の自分を後悔した。