傷跡
傷跡
『俺…富山に行ってたんだ。今日の朝まで』
『富山?』
今にも消えそうな小さな声で、
光輝はあたしに話を始めた。
『うん。母親に…会いに。っていっても10年ぶりぐらいに会ったんだけど』
『うん…』
あたしの知らない光輝の過去。
それが…
少しずつ明らかになっていく。
『ちょうど五ヵ月前かなぁ?親戚からの手紙に同封されて母親から手紙が届いたんだ』
五ヵ月…前?
ふと思い出した。
なんだか酔い潰れて帰ってくる日が増えたり、光輝がおかしくなり始めた頃じゃなかったっけ?
あたしは一人でそんなことを考えながら黙って話を聞いていた。
『10年ぶりなのにさ、いきなり母親から会いたいとか手紙が来て。なんか腹立って。でも…顔も見たくなかったのに…なんかさ、悩んでる自分がいたんだ。でも誰にも相談できないし。お前にも恥ずかしくて言えなかった。俺は…ずっと一人だったし何でも一人で考えてやってきてたから…小学生の時からずっと』
あたしは―――
光輝が何故、時々あんなに悲しい顔をしたりしていたのか。
その根底にあった心の闇に、ようやく辿り着いたんだ。