傷跡


『それからは地獄だった。親父は負債かかえて毎日資金繰りに走り回って。でもあんなに親父にベッタリだった同業者とか卸業者は手の平返したように冷たくなって。俺はあんまり覚えてないんだけどさ、一つだけちゃんと覚えてるんだ。親父に向かって…人間、地位と名誉がなくなったら終わりなんだって言ったんだ』




光輝は、唇を噛み締めて…

力いっぱい拳を握っていた。



きっと、思い出したくもない過去なはずなのに。



そんな過去を…

必死であたしに伝えようとしてくれてる。




だからあたしは…

ただ黙ってその言葉を受け止めていった。




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