傷跡


『そいつ…親父がずっと仲良くしてた親友みたいな人だったのに。だから親父は唇噛み締めて…涙をこぼしてた。あの姿だけが…今でもずっと忘れられないんだ。家も差し押さえで競売にかけられてなくなって。それからは親父の兄貴の家に居候させてもらったんだ。そしたら母親は…勝手に離婚届けを置いて出て行った。人の世話になるようなこんな生活は嫌ですって…富山の実家に帰ったんだ』




光輝の母親は…


お父さんとまだ小学生の光輝を残したまま…

勝手に一人で出て行ってしまった。





『俺には理解できなかった。一緒に富山に来いって言われたけど…親父から離れたくなかったしたった二ヵ月で痩せ細って頬もこけてやつれて…。俺の見て来てた親父とは別人になっていく親父をほっとけなかったから』





光輝が抱えていた過去の深い闇。



それが分かっていくごとに、
少しずつ分かってくる。



どうして光輝があんな目をするのか。


どうして時々いなくなったかのように心を閉ざしてしまうのかが。



でも……


閉ざしていた心の扉は開かれたんだよね。



あたしに…


開こうとしてくれてるんだよね?



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