傷跡


『結局その日は電車で帰って近くの公園で親父とおにぎり食ったんだ。でも楽しかった。一日中二人で遊んでくれたのって初めてだったからさ。ほんと…嬉しかった』




光輝はそう言うと、
そっと目を閉じていた。



まるで何かを思い出しているかのように。



そして閉じた瞳がまた開かれると…


悲しい淋しげな…

あの顔をした。



初めて会ったあの日に見たあの顔を。





『光輝…?大丈夫?』




あたしは、光輝が今にも壊れてしまいそうに見えて。


なんだか不安の波が押し寄せてきた。





『うん。まだ話さなきゃいけないことがあるから』




光輝はそう言って、
また話の続きを始めていった。




『でもさ……それが親父と遊んだ…話した…最後の日だったんだ』



『さ、最後?って…』




あたしは一瞬、
なんだか心に冷たい何かを感じた。


まだ分からないはずのその言葉の意味が…

伝わってきたからなのかもしれない。

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