最初で最後のキス〜短編
コンコンッ
私たちは悠斗君のいる病室の戸をノックする。
返事はない。医師や看護士、お見舞いに来てる人はいないようだ。
静かに戸を開け、中に入る。
ピッピッピッ…
規則正しく機械音が鳴り響く。
そこに寝ていたのは紛れもなく、屋上で笑いかけてくれた悠斗君だった。
「ゆ、悠斗…くん」
いつもは笑って返してくれるのに、全く反応がない。
私は近づき、そっと手に触れる。
あんなに触れたかった…
その存在は今ここにいる。
温かいんだね、悠斗君…。