最初で最後のキス〜短編
「わかんねぇよ」
大きい声で言ったわけではない。
でもその言葉が、皆の思考回路を侵食する。
この教室だけ時間が止まっているのではないだろうか。
一瞬の時間が永遠のように長く感じる静かな教室で、相川は続けた。
今この空気を支配しているのは他でもない、相川慶太だ。
「その苦しみを熊井に向ける理由が」
その彼が言った言葉にどれだけの力があるのか、考えることは容易い。
中村はその場に泣き崩れた。
「……ごめ…なさ、い…」
涙を拭いながら言う。
彼女はやっと自分がしてきた過ちに気づいた。
いや、本当はとっくに気づいていたのだろう。
激しく込み上げる嫉妬を抑えきれなかった。
彼女は、その感情を止めてくれる人を求めていたのかもしれない。
それが相川慶太だった。