最初で最後のキス〜短編





「おれに言われてもな。本人に言えよ。落ち着いてからでいいから」


相川は優しく、笑顔で言った。


人に希望を与える屈託のない笑顔。


誰でも持っているわけではない。


でも彼はそれを持っている。



「で、その本人はどこに消えたんだ?」


相川は頭を掻く。


彼がもどかしい時や恥ずかしい時にする仕草。



今回はおそらく後者だろう。




「走って教室を飛び出しました…」


中村の後ろにいた女子が言う。



その子にはもう恐怖心はなかった。


むしろどこか嬉しそうだ。









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