翼の約束
プロローグ
たとえるならば、鳥籠の外と中。

純白の大きな翼を持つ彼には、帰るべき鳥籠がなかった。翼を持たない私は、狭い籠の中で膝を抱えることしか出来なかった。

思い切り抱き合って、互いの体温を全身で感じることは私たちにはできなかった。けれど、私たちはそれで良かったのだ。
鈍く黒く光る格子越しにお互いの瞳を見つめ合い、そのほんの少しの隙間から手を伸ばして指を絡めあうことが、私たちに出来る唯一で、最高の愛撫だった。

触れ合うことの出来ない関係だったから、私たちは惹かれ合ったのだし、逆に言えば、触れ合えてしまうのならば、私は彼に惹かれることもなく、彼も、私に興味など抱きはしなかった。

それがたった一つの事実で、あの頃も、今も変わることはない。

そう信じてこれからも生きていかなければ、私は彼を二重に裏切ることになる。後悔など、してはいない。



今でも、彼の骨ばった細く長い指の感触が忘れられない。


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