翼の約束
「全然そんな、緊張なんてしなくっていいのに。」

普通に喋ったらいいんだよ。と、南君は言ってくれた。「なんで緊張するのかしらないけどさ。」

私は頷いて、「うん。」とだけ答えた。丁度、二時間目開始のチャイムがなった。

「あ、見せてくれてありがとう。またなんかあったらよろしく。」

南君はそういうと、がたがたっと机を元の位置に戻した。私はまた、小さく頷いてうん、と言った。

南君は二時間目も、教科書を出すだけ出して、ギターの練習をしたり、しばらくぼーっと窓のそとを見たりした。先生は、呆れた顔で彼を見ていたけれど、何も言わなかった。

二時間目が終わる頃には、彼はまた、あの黒いかばんを持ってだるそうに席を立った。この間と同じように友達になにやら言われながら、彼は歩き出した。
私には一言「じゃあね。」と言ってくれた。


彼が帰ってから、私は自分がどっと疲れていることに気がついた。
「(あんなに男子と喋ったのなんて、久しぶり。)」
一年のとき、男子を怖いと思うようになってから、男子とはほとんど喋ることはなかった。けれど、なんだか私は誤解しているのかもしれない。




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