翼の約束
しかし、最初に感じたとおり、彼に対しては怖いという感情も持ち合わせている。

心の中では彼を軽蔑しているけれど、態度に出すことはしない。なるべく関わり合いになりたくない。目線すら合わせたくない。

とても不快なことだけれど、学校内で地位が高いのは南君のほうだから。
かっこよくって少し悪ぶっている男子は、私のような地味な女子からしたら恐怖の対象でしかない。
かっこいい男の子、つまり南君みたいな人が、「あいつきもくね?」と一言言ったとしたら、私はたちまち他の男子からもきもいと罵られ、南君に媚売る派手な女の子たちからもきもいと言われてしまうのだ。

苛めにあっているはずもないし、おそらく特別な理由もないのに学校には来ない上に、私の平穏な高校生活を脅かす恐れもあるということで、私にとって彼の印象は最悪なのである。

馬鹿だと見下している人間にびくびくおびえている自分ももちろん、嫌いなのだけれど。

きもいとクラスメイトたちから言われながらも学校に行き続ける勇気はないし、かと言って、きもいと言われないよう校則をやぶってまで張り切って化粧する度胸も無い私は、先生にばれない程度の薄化粧をし、髪の手入れと制服の身だしなみに気を配っている、なんとも情けない女子高生なのだ。


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