翼の約束
「(あ!)」

南君は、ずっと私を見ていたようだ。
ぱっと目が合った南君は、笑いをこらえているようだった。私は目をそらすことも出来ず、かあっと顔が熱くなっていくのを感じた。

「笑っただろ、俺のこと。」

隣の席といっても、中学校のようにぴったりと机がくっついているわけではない。彼のひそひそ声はほとんど聞こえなかったけれど、口の動きでそう言っているのがわかった。

じっとこちらを睨んでいて、授業が終わった後、周りの人たちに私の悪口を言うんじゃないかと思っていたので、まさか笑っているとは思わなかった。恐怖はなくなったけれど、かわりにとても恥ずかしくてどうしたらいいのかわからなくなってしまった。

目をそらすことも返事をすることもできず、オーバーヒートした私の頭はだんだんぐらぐらしてきた。

「前、向いたら。」

南君はにやにやしたまま、あごをちょっと動かしながらそう言った。私ははっとして、前を向く。さっきまでほとんど黒かった黒板は白や赤のチョークで埋まっていた。
私は慌てて、握っていたペンを動かし始めた。


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