翼の約束
なんとか南君の目線から逃れることは出来たけれど、まだ安心することは出来ない。

授業終了のチャイムが鳴り、礼が済むと教室の空気はふっと緩み、ざわざわとクラスメイトたちの声が聞こえだす。
私は、教科書を片付けながらも神経は南君の行動に集中していた。

「よぉ。久しぶりぃ。」
「派手な登場しやがって。」

茶化すような言葉を南君に投げかけたのは、これまた私が怖がっている、垢抜けていて、地味な女子を見下しているかんじの男子たちだった。

彼らはじゃれあうように軽く小突きあいながら、談笑している。
私は、南君が「隣の女子、にやついててきもい」といつ言い出すかとびくびくしていたのだが、そんな様子はまったくなく、私はまた拍子抜けしてしまった。

「(もしかして、私が勝手に怖がってるだけで、南君はそんな嫌な奴じゃないのかも。)」

一年のとき、クラスを取り仕切っていた派手なかんじの男子たちが、ちょっとださめの地味な女子を目の敵にして、彼女たちに「きもい」というレッテルを貼ったことから、垢抜けたかっこいい男子はみんなそうだと思って警戒してたけど・・・そうなると、南君には悪いことをしてしまった、というか思ってしまったと、私は反省した。


< 8 / 20 >

この作品をシェア

pagetop