世界を敵にまわしても
プロローグ


高城 美月(たかしろ みつき)
17歳、高校2年生。


学校での生活態度は悪くないと思う。


肩下まである髪は黒く、制服は適度に着崩しているけれど注意されたことは一度もない。大半の生徒と一緒だからだ。


成績は文句なし。これと言って苦手な教科もない。


部活には入っていないけれど、放課後に遊ぶ友達もそれなりにいる。


家に帰れば家族がいて、夕飯を食べながらテレビを見て。自室に戻れば宿題と授業の予習復習をする。


そこそこ真面目で平凡な女子高生。それが高城美月だと思われている。



――思わせている。



あたしはただ、毎日を何事もなく過ごしたいだけ。平和で穏やかな毎日とはまた違う、自分の中で作った“不変”を貫き通すだけ。


そんなことをあたしが考えているなんて誰も知らないし、想像すらしない。


不満はないけど、満足もしていない毎日だとしても。楽しくもなければつまらない毎日だとしても。


あたしはそれでいい。

何も変わらない。
変えることなんて出来ない。


そう、思っていた。



1枚の楽譜を手にするまでは――…。
< 1 / 551 >

この作品をシェア

pagetop