世界を敵にまわしても
「美月っ、行こぉ!」
「あ、うん」
ミキが来て、あたしは重い腰を上げる。あたしとミキが向かった先にはもちろんサトミとユイもいて、パート練習と称した自由時間になることが感じ取れた。
「ねー! さっき黒沢さんと話してなかった!?」
「え? あぁ……」
話したっていうか、あたしは一言も発してないけど。
「椅子がね、ぶつかって。それで謝られただけだよ」
「結構すごい音したよね~」
「ワザとぶつけたんじゃん?」
「えー、コワッ!」
「……」
たかが椅子がぶつかったくらいで、何でそうなるんだろう。しかも、謝られたって部分はスルーか。
「ちょっとー、気を付けなよ美月ぃ」
「てか、パート練習なのに動く気配ゼロだね!」
「協調性がゼロなんでしょ。見ててイラつく」
サトミの毒舌に、ミキもユイも笑った。
……こういう部分が、3人とは合わない。嫌だと思うし、疲れる。
悪口は良くないとか、善人ぶりたいわけじゃない。誰しも気に入らない人はいるだろうけど。
ほぼ全員が黒沢さんと関わったことが無いのに、毎日毎日しょうもない悪口ばかり。
どうでもいいし、くだらない。
そう思いながら、あたしは否定も肯定もせずに笑う。
笑わなければいけない。
独りに、なりたくないから。