世界を敵にまわしても
「つまり、独り占めしたいって事だよね?」
菊池さん達に微笑むと、逆鱗に触れてしまったらしい。
分かってんなら近付くなとでも言いたげな顔だ。
あたしからすれば、遠回しではなく直球で言えばいいのにと思うけど。彼女たちのプライドみたいなものが許さないんだろうな。
「……ていうか、晴も先生も優しいからって勘違いしない方がいいよぉ? これ、親切ね」
イビってるようにしか思えませんが。
晴も先生もウチ等のもん。近付いてほしくないけど、直接そんなこと言うとがっついてるみたいでダサーい。って感じ?
あたしなんかに絡んでくる時点でダサいと思うけど。
「マジなら応援してあげてもいいけどさぁ。最初は、ねぇ?」
「あ、そんなに付き合ってみたいなら誰か紹介してあげよっか?」
怒っていたはずの声が、クスクスと笑いを含んでくる。
一体あたしはいつの間に、彼氏が欲しいだけの女になったんだ。
「とりあえず晴と先生は諦めて、他の男で経験しといたらぁ?」
しかもちょっと尻軽っぽいし。
「ふっ……アホくさ」
呆れ掛けたあたしの代わりに苦笑を洩らしたのは、どの女子よりも低音で、ハスキーな声を持った椿だった。
椿の言葉よりも、聞こえていた事に驚く。ヘッドフォンをしてても、聞こえるものなの?