世界を敵にまわしても
「座った? はい、じゃあ今日はー合唱についてちょっと勉強してから終わりにしよう。教科書7頁、開いて」
30分のパート練習が終わって、再び全員が席に着く。
前の席には、結局30分間座ったままだった黒沢さん。
一応今はヘッドフォンは取ってるみたいだけど、パート練習中何も聞こえなかったんだろうか。
……というか、自分の悪口なんて聞きたくないよな。
「えーと……混声合唱は4声部。既に分かれてるから知ってるよね。ソプラノ、アルト、テノール、バスが標準的な形」
朝霧先生の言葉を耳に入れながら、あたしは教科書も開かずぼんやりと黒沢さんの金髪を見ていた。
「合唱の起源は古く、多声による本格的な合唱の形が一般化してくるのは、14世紀になってから……と言われてます」
14世紀……言われてもピンとこないけど……。
その頃にはもうあったんだよなぁ……インドのカースト制度。
誰が考えたのか、それを由来にした言葉が現代にはあって、ぴったり過ぎて逆に怖い。
『スクールカースト』
学校内における『人気のヒエラルキー』のことだ。
例えば上からA・B・Cに分かれる、ピラミッド型の段階的組織構造みたいなもの。