世界を敵にまわしても
「……は、ぁ? 何? ウチ等に言ってんの!?」
あたしに注がれていた視線は一気に椿に流れて、それに応えるように、椿はヘッドフォンを取って顔だけ振り向いた。
「ギャーギャーうるせぇな。誰かと誰かが仲良くすんのに、アンタ等の許可なんて必要ねぇだろーが」
「はぁ!? 誰もそんなこと言ってないし!」
「あぁそう」
憤怒する菊池さん達に対して冷めた態度を取る椿は、余計菊池さん達の怒りを煽ってるように見える。
「つか、アンタじゃなくて美月と話してんだよっ!」
「え、まだあるの?」
言って、ハッとする。多分今日で1番、冷めた発言をしてしまった。
運が良いのか悪いのか、予鈴があたし達の空気に割って入る。
「「「……」」」
怒りで爆発でもしそうな顔だった菊池さん達は、Aランク同士で目配せをして「行こ」と背を向けた。
菊池さんだけはあたしの前に立って、最後に一言告げてくる。
「ウザ……」
小さな声で、ボソリと。憎しみにも似た感情を存分に乗せて。
睨みを利かせて去っていく菊池さんの背中を見てから、ミキ達に視線を移した。
バッチリと目が合った後に目を逸らしたミキも、合う前に顔を背けたサトミもユイも。
あたしとは関わらない方がいいと判断したみたいだ。