世界を敵にまわしても
「あ! 居た! 美月っ!」
口を開き掛けた菊池さんがグッと口を噤んだ。
「……何っ、え!? 何!?」
振り返ると、質問に答える暇もないと言うように、晴があたしの腕を引っ張る。
菊池さん達が呆気に取られている間に、あたしは廊下に連れ出されてしまった。
「何、何なの晴っ」
グイグイと腕を引っ張る晴に、脚がもつれそうになるのを堪えて着いて行く。
その小柄な体のどこに、こんな力があるんだろうって思うくらい、晴はあたしの腕を引っ張って廊下を進んだ。
「あ。来たよ、晴」
「あははっ! マジで連れてきてるしっ!」
「お前らが連れてこないと……っダメッて言ったんだろー!?」
「ぎゃはは! テンパッてんよ!」
連れて行かれた先は、1組から7組まで一列に並ぶ廊下の1番端。
派手めな3人の男子生徒が座る場所に連れて来られた意味が、あたしは未だ理解出来てない。
「な、何? 晴、何事?」
「え、あ、あーっゴメン! 何でもない! いや、なくはない!」
「支離滅裂じゃねぇか」
「うっせーバカ!」
ギャーギャーと騒ぐ晴と、他の3人。見たところ、部活仲間っぽい。