世界を敵にまわしても


「ねぇ、何なの?」

こっちの台詞だ。


腕を組んであたしを睨みつける菊池さんはもう、嫌がらせ程度じゃ効果はないと思ったんだろうか。


ジリジリと詰めてくる距離に困る。


「毎日毎日晴とさぁ、しかもヨッシー達とまで仲良くしてるって何様のつもり?」

菊池さんがそう言い出すと、他のふたりもあたしとの距離を詰め
た。

「見せびらかしてんじゃねぇよ」

「マジでウザい」


……あぁ、そういえばヨッシーも人気者だって晴が言ってたな。1組の子たちは主にヨッシー派だったけど。


「聞いてんの!?」


ドンッと肩を押されて、下駄箱に背中を強くぶつける。


……痛いんですけど。


登校してきた生徒たちに見られている事には気付いていたけど、菊池さん達は気にしてないようだった。


「あのさ、場所変えない?」

「はぁ? アンタがウチ等の忠告聞けばいい話だろ」


親切がいつ忠告に変わったんだ。


「晴に近付くんじゃねーよ」


食い入るようにあたしをにらむ菊池さんの瞳はすごく怒りに満ちていたけど、本気とか真剣とか、そんなものも感じ取れる。


……菊池さんってもしかして、本当に晴が好きとか? 噂も、なぜか晴の事ばっかりだったし。


だったら、あたしに構ってないで晴にアピールすればいい話じゃないの?


「……こういう事しても意味なくない?」

「ウチ等はアンタに身の程知れって言ってんだよ!」

「だから、そういうことじゃなくて」


何で伝わらないかな。こんなやり方じゃなくて、もっと――…。


プッと笑う声が聞こえて、あたしも菊池さんも止まった。

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