世界を敵にまわしても
「見てアレ。朝からすげー」
「てか噂になってた子、普通に美人じゃん?」
「八つ当たりされて可哀相ー。身の程知れってどっちだよ」
他のクラスの……あたしから言わせればAランクの女子達。
上級生も居たような気がするけれど、明らかに数日前とは立場が逆転していた。
あたしに発せられていた悪口が、いつの間にか菊池さん達に向けられている。
「……朝からごくろうなこったねー、アンタ等」
「椿……」
「はよ」
一際異彩を放つ椿が登校してきた事で、ヒソヒソとした話声は増幅した。
「何かあの子にも嫌がらせしてるらしーよ」
「完全僻みじゃん?」
「ちょっと笑えるよね」
通りすがりにそんな事を言われても、菊池さん達は言い返すことはしない。挙句椿に「邪魔」と言われて、睨む事しか出来ない始末。
「何なのっマジでムカつく!」
「見てんじゃねーよ!」
「もう行こっ」
バタバタと足音を立てて去って行く菊池さん達を、あたしは眺めることしか出来なかった。
「大丈夫?って、ウチに関わったからだよね、コレ」
「……謝ったら怒るよ。椿のせいじゃないんだから」
椿の何とも言えない視線を感じながら、あたしは一歩前に進んだ。
少し泣きたい気持ちになったのは、こうなってほしかったわけじゃなかったから。