世界を敵にまわしても
「ねぇ、何でそんな微妙な顔してんの」
黙って隣を歩いていた椿にあたしは俯いていた顔を上げて、でも言葉は出なかった。
再び俯いたあたしは、何て言えばいいのか分からない気持ちに苦しくなる。
「美月。飲み物買い行こ」
返事も聞かずにあたしの手首を引いた椿に少し戸惑ったけど、黙って着いて行った。
晴も、こんな風にあたしの手を引いたなと思いながら。
「ん」
1階の外ロビーにある自販機の前。そこにあるベンチに腰掛けていると、椿はあたしの飲み物も買って隣に座った。
「あ、ありがと……お金」
「いらない」
即答されて、あたしは素直に甘えることにした。
紙パックのカフェオレにストローを差して、チラリと隣の椿を盗み見る。
前だけを見つめる椿の金髪は、陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。
入学した時からさほど変わっていないその姿から、あたしはゆっくりと視線を外す。
1年生の時も、2年生になってからも、こんな瞬間が来るなんて思わなかったのに。……思わない様にしてたと言った方が正しいか。
「あたしさ、椿と話してみたかったんだよね」
「何で?」
「周りが言うように、悪くは思えなかったから」
そう思いながら、周りに合わせてたのも事実だけど。