世界を敵にまわしても


「先生……晴に頼んだって、もしかして1組の? ヨッシーたちと協力するように、晴に言ったの?」

「……いや、俺は別に」


何だソレ。今更ごまかそうなんて、往生際の悪い人だな。


「絶対そう。晴の人脈が広いこととか、晴とヨッシーが組んでるバンドの知名度が高いことぐらい先生知ってるでしょ」

「……」

「いつから? いつ、何て言ったの? あたしの噂が流れた時から?」


……何で黙るの。


背中を向けられても、答えなんか分からない。


先生が言ったんじゃない。会話は1番、人と人の距離を近付けさせると思うって。


話せば、本当の自分で話せば、相手のこと知れるんでしょう? 先生との距離を近付けさせてくれるんでしょう?


「先生ってば!」


返ってこない答えにしびれを切らせて腕を引っ張ると、先生はやっとあたしと顔を合わせた。


先生は手で口を抑えて、あたしは目を見張った形だったけれど。


「……」

「ちょ、待って……ほんとに今、恥ずかしいから」

「……照れてるの?」


顔が、赤いよ先生。


ポカンと見上げると、先生は口を抑えてない方の手であたしの額に触れる。


恐ろしい程自然に、いつの間にか伸びてきた左手に目隠しされて。


「見ないで」

なんて言うから、心臓が爆発するかと思った。
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