世界を敵にまわしても


恐る恐る先生の手に触れると、目隠しは思いのほか簡単にほどける。


「……話してくれないと、見る」

「分かった、分かったから落ち着いて」

「先生がね」

「うん、ちょっと待って……」


ハァ、と右手で額を抑える先生は溜め息をついて、あたしはソッと掴んだ先生の左手を下ろす。


そのまま離さずに、指先だけが出る黒い手袋に視線を落とした。


……冷え症だって言ってたけど、そんなに冷たくないんだな。


恥ずかしくて、体温上がってたりして。


「……何で笑ってるの」

「晴にバラされるなんて、思いもしなかったんだろうなと」

「ほんとだよ……今度雑用押し付けてやるよ俺は」


大人げないな。


……でもやっぱり放課後の先生の方が、素を出してる気がする。


嬉しい、そう思ったら先生の手を掴んでる事が恥ずかしくなって、すぐさま離した。


顔を上げる事が出来ないで居ると、先生が小さく息を吸う。


「……宮本に相談されたんだ。多分自分のせいで、高城の変な噂が立ってるって。それで……だったら自分で何とかしろって」

「肝心なとこを濁すんだ」


ボソッと床に向けて呟くと、先生はきっと困った顔をしてあたしを見下ろしてる。
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