世界を敵にまわしても
「下手に気を使って距離を置くより、周りに見せ付ければいいって言ったんだ。噂が嘘だと思えるくらい、宮本が高城の傍に居て。まずバンド仲間に話して、協力してもらえって」
「……うん、それで?」
「……宮本のバンド仲間も、軽音部の奴らも全校生徒に知名度も人気もあるから。そこから噂が嘘だと広めていけば、確実だからって助言しただけ。……噂が立ったのは、俺のせいでもあるし」
「それだけ?」
静寂な準備室に、気を使う。
体の内側から鳴り響くあたしの鼓動が聞こえはしないかと、それで更にドキドキする。
「……先生、それだけ?」
「……俺が出ると、また余計な噂が立つかもしれないから。宮本が代わりに、守ってやって……って言いました」
「……終わり?」
「終わり」
……何なんだ、この人は本当に。
隠れてコソコソと、何もしてないなんて言いながら、思いっきりしてるしバレちゃってるし、格好悪い。
大体家の事も今回の事も、助けてとか守ってほしいなんて一言も言ってない。
……とか、本当あたし可愛くない。
嬉しいくせに。
涙が浮かぶほど、嬉しいくせに。
おかげで顔を上げられないなんて、あたしバカみたい。