世界を敵にまわしても

世界の始まり



真正面からフラッシュをたかれたような。木々の枝葉の間から差し込む日光のような。


鋭くもあり鈍くもある輝きは引力を持っていて。


あたしはただただ引っ張られて、呑み込まれて、溺れていく。


抜けだす方法は、知らない。




「好きなの?」

「はい!?」


突然掛けられた声に顔を上げると、椿が片眉を上げて不審そうにあたしを見下ろしていた。


「あ、お、おはよ」

「はよ。何、今の驚きっぷり」


あたしに体の側面を向ける形で椅子に腰掛けた椿は、長い脚を組んで微笑む。


「いや、ビックリして」

「にしても驚き過ぎ。好きなの? この店の服」


カラフルな指先があたしの机に広げられた雑誌に置かれ、トントンと指差す。


椿が置いていったファッション雑誌を勝手に読んでたんだけど、好きなのかと聞かれても頷けない。


全く頭に入っていなかったんだから。


「可愛いとは思う」

「美月はこっちのが似合いそう」



――5月中旬。

晴天の下、どこかぎこちなさが残る教室内で椿と他愛ない話をする。



心の奥底に、先生が好きだという思いを隠したまま。

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