世界を敵にまわしても


「高城ー」

「はい……」


今日も変わらず、入院している担任の代わりに先生が教壇に立つ。


あの日から……あの、あたしが抱き付いてしまった日から、今日で4日目。


一昨日も昨日も、音楽室には行ってないけど、別に何も変わらない。


これっぽちも、全く、全然変わらない。


「……」


これじゃあ、何か変わる事を望んでるみたいだ。別に望んでないけど。


そう、けど。だけど。


「保護者プリント配るから、ちゃんと見せるようにね」


先生は何で、あたしを抱き締め返したんだろう。


――優しさ?

……何の。あたしに対して?それって同情とかそれ系じゃない?


でもそうすると、例えば他の女子にも抱き付かれたら、返すって事じゃない?


ってことを延々と考えてのに。何で先生は飄々と――…。


「「……」」


先生だけ映っていた視界に椿が現れて、ヘーゼルの瞳と目が合った。


「……ん?」

「ん、じゃなくて。プリント。何ボケッとしてんだか」

「あぁ……ごめん」


プリントを受け取り後ろに回して、軽く溜め息をつく。



やっぱりあたしは、先生のことがよく分からない。
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