世界を敵にまわしても
朝のホームルームが終わり、先生が教室を出て行くのを見送ってから、あたしは席を立つ。
「便所?」
綺麗な顔でそんなこと言うな!
振り向いた椿に呆れた視線を送りながらも頷くと、椿も立ち上がった。
「喉乾いた」
「教室来る前に買ってくればいいのに」
「遅刻するべや」
あぁ、確かに。
そう思いながら椿と教室を出て、椿は1階の自販機に行く為に階段の前で別れる。
椿はいっつも何かしら飲んでるな。
安っぽい芳香剤の匂いがする女子トイレの中。手を洗ってハンカチで水滴を拭いながら、ドアが開くのを鏡越しに見つめた。
「……あ」
あ、って。
まぁ、あたしも思ったけど。
鏡越しに目が合ったのはミキ達で、あたしはハンカチを畳んでスカートの中に押し込む。
そのままミキ達の横を通り過ぎるつもりだったのに、あたしは遮られた道に足を止めた。
見ると、サトミもユイも形容しがたい視線をあたしに送っていて、「美月……」と弱々しい声でミキが口を開く。
「あの、あたし達……無視してゴメンね!」
そんな事だろうとは思ったけど、まさか本当に言われるとは。