世界を敵にまわしても
「うん。……気が向いたら」
そう返したらサトミが呆れた顔をして、ユイが笑ったから。
やっぱり終わって、また始まったんだなと思った。
「わっ!……何っ」
突然華奢な腕が首に回されて、椿を見上げると悪戯っ子みたいに口の端を上げている。
「今日、ウチと遊ぶべ」
「……やだ。何考えてんの?」
「ハイ決定。拒否権ないから」
「それ絶対嫌がらせで言ってるでしょ」
「あー予鈴鳴ったー」
「ちょ……!」
スルリと腕の締め付けが消えて、椿は1人教室に向かう。
「ちょっと! 遊ばないからね!?」
振り返って笑う椿は、それはもう本当に綺麗で悔しくなる程可愛かった。
小悪魔と言うには物足りない気もするし、魔女と言ったら言い過ぎな気もする。
世話が焼けそう。
なんて軽く考える時点で、あたしは素のまま、椿とこの1年過ごすんだろうと思う。
「……」
言いたいことが言える自分は、カッコイイわけじゃない。
言いたいことを我慢も遠慮もなしに言えるのは、それを黙って聞いてくれる人がいるからだ。
そばに、誰かがいるから。
そう思うと、もう少し優しくなろうかなとか。
自分の周りに人がいるって、幸せなことなんだなと改めて思う。