世界を敵にまわしても
「え。中学の時から金髪なの?」
同じ路線の椿と電車に揺られながら、あたしは新事実に驚く。
「外人に生まれたかった」
いやいやいや……十分日本人離れした美貌だと思うけど。
「あたし、髪染めたことない」
「良くね? 変に茶髪とかに染めるより、黒髪のが似合う気ぃする」
そうかな。あたしの黒髪は肩下10センチ程度の長さで、前髪も眉のあたり。
前髪は伸びたら自分で切って、切り過ぎたってパターン。言わないけどね、そんな失敗談は誰にも。
「つか美月、化粧うっす! てかしてんの?」
「眉毛とマスカラとパウダーぐらいはしてるけど」
「ファンデ塗ってねぇだと? ムカつく」
痛いんですけど。
あたしの頬をつまむ手を退けて、ジッと目の前の繊細なパーツを見る。椿の綺麗さは、溜め息しか出てこない。
「いいな。綺麗で」
「何ソレ。気食ワル」
気食悪いって!褒めてんのに!
「何、綺麗に見られたい人でもいんの? ん?」
「そんな事は言ってないっ」
思わずドキリとしてしまった。あたしが先生の事を好きなのが、バレたのかと……。