世界を敵にまわしても
「「いいなぁぁあ美月!」」
放課後。ユイとミキが同じ事を言うから、あたしは「じゃあ変わってくれる?」と言ったのに断られた。
「雑用は無理~」
「ていうかウチら部活あるしね!」
どういうことなのコレは。
「まぁ頑張ってよ。いいじゃん、イケメン教師と2人っきり」
「大丈夫だって! 朝霧先生優しいし、話し掛けてもうんうんって聞いてくれるから、退屈しないと思うよ!」
話す事なんかないし、そもそもカッコいいとも思ってない……なんて言ったら空気に亀裂が入る。
「あは……今日だけだし、さっさと終わらせて帰るよ」
冗談じゃない、本当に。出来ることなら変わってほしいけど、自分がまいた種だ。
「じゃあ、あたし行くね」
「うん! ミキ達も部活だし、美月も頑張ってねぇ~」
バイバイと手を振って、あたしは重い足取りで音楽室へと向かった。
「失礼します」
無駄に時間が掛かった気がするのは、足どころか気も重かったからだろうか。
体中重い。
「誰ー? 高城ー? こっちこっち!」
朝霧先生の声が音楽室に併設されてる準備室から聞こえ、あたしは小さく溜め息を吐いてからそこへ向かった。
「はは、来たね」
「……雑用頼んだのは先生じゃないですか」
「んー? まぁそうだけどね、来ない奴もいるからさ。でも高城は絶対来ると思った」
二コリと笑って椅子から立ち上がった先生を見て、どういう意味だろうと思いつつ少し驚く。
授業中はそれどころじゃなかったけど、改めて見ると背が大きい。