世界を敵にまわしても


「「いいなぁぁあ美月!」」


放課後。ユイとミキが同じ事を言うから、あたしは「じゃあ変わってくれる?」と言ったのに断られた。


「雑用は無理~」

「ていうかウチら部活あるしね!」


どういうことなのコレは。


「まぁ頑張ってよ。いいじゃん、イケメン教師と2人っきり」

「大丈夫だって! 朝霧先生優しいし、話し掛けてもうんうんって聞いてくれるから、退屈しないと思うよ!」


話す事なんかないし、そもそもカッコいいとも思ってない……なんて言ったら空気に亀裂が入る。


「あは……今日だけだし、さっさと終わらせて帰るよ」


冗談じゃない、本当に。出来ることなら変わってほしいけど、自分がまいた種だ。


「じゃあ、あたし行くね」

「うん! ミキ達も部活だし、美月も頑張ってねぇ~」


バイバイと手を振って、あたしは重い足取りで音楽室へと向かった。




「失礼します」


無駄に時間が掛かった気がするのは、足どころか気も重かったからだろうか。

体中重い。


「誰ー? 高城ー? こっちこっち!」


朝霧先生の声が音楽室に併設されてる準備室から聞こえ、あたしは小さく溜め息を吐いてからそこへ向かった。


「はは、来たね」

「……雑用頼んだのは先生じゃないですか」

「んー? まぁそうだけどね、来ない奴もいるからさ。でも高城は絶対来ると思った」


二コリと笑って椅子から立ち上がった先生を見て、どういう意味だろうと思いつつ少し驚く。


授業中はそれどころじゃなかったけど、改めて見ると背が大きい。



< 17 / 551 >

この作品をシェア

pagetop