世界を敵にまわしても


「……っごめんなさい」


顔を隠していた手首をつかまれて、そう言った。


顔をそむけても、零れ落ちる涙は隠せない。


「……どうして謝るの?」


許してほしいわけじゃない。ただ、伝えずにはいられなくて。


「……ごめんなさい……っ好きで、好きになって……」


独りだったあたしを、助けてくれたのに。本当は、ちゃんと恩返ししたかったのに。


先生相手に恋心抱いて、あたしはただの生徒なのに。


好きになったあたしはバカだ。


でも嫌なの。


想いを伝えられずに終わるなんて、絶対に嫌。



「ここを……失いたくない」


先生が子供っぽくなる放課後。そばにいるのはあたしがいい。


あたしだけに、その姿を見せてほしい。


「先生に、嫌われたくない」


この場所でもっともっと、話しがしたい。2人の時間を、ずっと続けたい。


先生にからかわれて、笑われて。準備室で先生の手伝いしながら、お菓子食べて。


何でもいい。何でもいいから。


「……先生のそばにいたい」


一滴の涙が床に落ちたのを見て、あたしは先生と目を合わせた。


涙で顔がぐしゃぐしゃな気がする。でも先生は真っ直ぐあたしの瞳を見てくれてるから。




「……好きです、先生」



あなたと、恋がしたい。
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