世界を敵にまわしても
「……楽しかったよ。高城と過ごす放課後は。今日は来るのかな、来ないのかなって思ってたよ、本当に。だから、高城の気持ちは凄く嬉しいんだ」
あぁフラれるんだなと、冷静に思った。
「……ゴメンね。俺が色々お節介焼いたから、高城は好意を持ったことに罪悪感、あったでしょ?」
散々知らないフリしてたくせに。ここで、今この時、色々お節介焼いたって認めちゃうんだ。
……ズルイね、先生は。
先生なら上手くフリそうだって思ったことがあったけど、当たってるみたい。
「俺……高城の笑顔好きだよ。初めて俺に笑顔見せた時、覚えてる?」
緩く首を振ると、先生は微笑んで一瞬だけピアノを振り返った。
「楽譜を取りに来た時だよ。俺が椅子に腰掛けてて、高城が帰り際に、前髪切ったほうがいいと思いますって言った時。昼の仕返しだとでも言うように、笑った」
あぁ……あの時か。
ヘタクソだって言った日だ。
「俺その後1人で腹抱えて笑ったんだよ」
「……」
「嬉しくて、しょうがなかったから」
……やめてほしい。そういうの、逆効果だと思う。
泣きそうだけど、期待して、浮かれてしまいそう。
でも先生の言いたいことが分かるから、そんな気持ちは心の奥底に沈める。