世界を敵にまわしても


「高城には、笑って学校生活送ってほしい。それが、俺の願い」


送るよ。先生がそう言うなら。

でも想いはきっと、消えない。



先生から触れ合う手に視線を落とす。


まだ先生の温度を感じていたいと思いながら、あたしは大きな手から自分の手を引いた。


「……」

「それで、そんな高城をそばで見てたい。……のが、俺の希望」


何でまだ、あたしの手が先生につかまれたままなんだろう。


「高城に、放課後と授業中じゃ違うって言われた時、しまったと思ったよ」

「……先生?」

「俺あの時、凄い焦ってたの気付いてた?」


可笑しそう……違う、いつもと変わらない笑顔なのに……嬉しそう。


「あからさまに違うんだとか失言して、とっさに誤魔化したけど……ずっと誤魔化せたかなと思ってたんだ」


ちょっと待って。

意味が分からない。

いや分かるけど、放課後と授業中で違うって事に浮かれてたけど……。


「……先生」

「ん?」


聞きたかった。
ずっと聞けなかったけど。


聞かずに終わるんだと思ってた……でも今なら、聞けるかもしれない。



「……何であの時、抱き締め返してくれたの……?」


先生は目を丸くして、あろうことか俯いて吹き出した。


でも笑いを噛み殺して顔を上げると、あたしの好きな瞳を細める。くしゃっとした笑顔なのに、ゆったりと優しいから不思議だ。


自分の涙ですぐ、ぼやけてしまったけど。




「好きだから、抱き締めたんだよ」


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