世界を敵にまわしても


「……まぁまぁです」

「1年生の時からずっと1位キープしてんのに?」

「何で知ってるんですか」

「職員室でよく話題に出てたからね。教員は全員知ってるよ。創立始まって以来の秀才だーって」


フッと鼻で笑うと、「謙遜してもダメだよ」なんてお気楽なことを言ってくれる。


「昔から頭良いの?」

「まさか。自分が頭いいなんて思ったことないですよ」

「どうして?」

「努力してるんです」


無駄な努力だけど。


プリントから目を離さず、朝霧先生の目を見ることなく。あたしは淡々と答えて、黙々と3枚の資料をホチキスで止める。


「何の為に?」


手が、止まった。


……何の為に?自分の為に決まってるじゃない。


あたしはゆっくり顔を上げて、多分、微笑んだ。


「……先生ってお喋りなんですね。意外です」


目を丸くした朝霧先生は暫くそうして、黒縁眼鏡の奥で目を細める。


一瞬怪しげな光を帯びた気がしたけど、レンズにでも光が反射したんだろう。


「高城はいつもつまんなそうな顔をしてるよね」


再びプリントに落とそうとした視線が、朝霧先生の言葉で妨げられた。


「……そうですか? 心外です」

「あれ? 違う?」


……何なんだ一体。あたしの何を知ってるっていうの。

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