世界を敵にまわしても
「……先生」
「何でしょう」
「……好き」
くぐもった声だと自分で思いながら、それくらいがちょうどいいと思った。
一度好きだと怒鳴っておいて、今更だけど。恥ずかしものは恥ずかしい。
鼻をすすると、先生の腕の力がゆるむ。お互いゆっくり離れて、あたしはまだ顔に熱を残したまま、微笑む先生を見上げた。
「知ってる」
「そうですか……」
ニコニコと笑う先生を見てると、気が抜ける。
でも、あたしも先生の笑顔が好きだ。ずっと笑っててほしいなと思う。
「高城」
「何でしょう」
あ、いつもと逆だ。
そう思うと、先生の指先が目元に残っていた雫をすくい取る。
その手つきがあんまり優しくて、また頬を染めてしまいそうになった。
……愛しさを含んでると、思ってもいいのかな。
あたしに触れる指先にも、あたしに向ける笑顔にも。
「俺と恋、してくれますか」
クサイ。
けど、華が咲いたみたいに心の奥から嬉しさが拡がる。
「喜んで」
そう微笑んで言えば、先生も満面の笑顔をくれた。
幸せ。
信じられないくらい幸せで、嘘のようで。
だけど笑顔も込み上げる愛しさも、確かに本物だった。