世界を敵にまわしても
第2章:慟哭モンタージュ
混合フラグメント
――恥ずかしい夢を見た。
先生に好きと言われて抱き締められる、現実であった事をそのまま再現したような夢。
……現実に……あったよね?
「みーつーきー」
「……椿。おはよう」
学校へ向かう途中、ダルそうな声に呼ばれて振り向くと一足先に衣替えした椿が居た。
ワイシャツの袖を捲って、深緑のニットベスト。透けそうな程白い肌には、いくつかのアクセサリーが付けられている。
「毎日完璧だね。いつも準備に何分掛けてるの?」
「1時間くらい。美月は30分も掛かんねぇべ」
えぇまぁそうですけど、何か。
そう目で訴えると椿はフッと笑って、空を仰いだ。
「はー、明日から6月か」
「何か嫌なことでもあるっけ?」
「梅雨じゃん」
なるほど。あたしも雨はあまり好きじゃないけど、別に憂鬱ではないかな。
校門を通り過ぎた所でポケットから振動が伝わり、携帯を取り出す。
『おはよう』
届いたメールを読んで校舎を見上げると、3階のベランダに差出人がいた。
ギュッと突然胸が締め付けられて、あたしは慌てて携帯を閉じて視線を落とす。
昇降口に向かう前にチラリと3階を見上げると、案の定先生は手すりに顔を突っ伏して笑っているようだった。
「~~っ」
行き場のない恥ずかしさと嬉しさと、若干の悔しさ。
――明日から6月。
あたしはまだ、夢うつつ気分。