世界を敵にまわしても
「はぁっもう! 意味分かんないんですけどぉ~」
教室に入ると、窓際の後ろの席で不機嫌そうな菊池さんが目に入った。その周りにはいつも通り派手な子が集まっている。
「もう諦めたらぁ?」
「無駄ムダっ! どうせ嫌味言われんじゃん」
あぁ、宿題の話か。
1時間目が数学だから間違いない。きっと自分が当てられる問題をやってこなかったんだろう。
「アイツムカつくんだよねー。まぁ、適当な答え書きゃいいでしょ」
机に鞄を置いて、椿が席に座るのを何気なしに見つめる。
少し考えてから、あたしは席に座らず菊池さん達の元へ向かった。
「昨日もさー、解りませんって言っただけで宿題出しやがってマジ何様……」
あたしに気付いた菊池さん達の視線を一斉に浴びながら、机の上に置かれた教科書とノートを見る。
「……応用問題の3から6まで?」
「は? そうだけど……な、に」
菊池さんの手からペンを奪って、既に問題が書かれたノートにペンを走らせる。
スルスルと計算を解くあたしは、3つ目の答えを書いてからペンを置いた。
「今日も間違ったら、また宿題出されると思うよ」
特に菊池さん達はうるさいから、目も付けられてると思うし。