世界を敵にまわしても


「ほっといてください」


朝霧先生の手から乱暴に本を奪って、背を向ける前に睨み上げる。


「教師だからって、憶測だけで軽々しく人の気持ちを語るのはどうかと思いますよ」


最後の最後に辛辣な皮肉を言って、準備室から逃げるように出た。


波打つような脈が、荒々しい歩行が、あたしの怒りを表す。


――嫌いだ。


あの人自身も、大人ぶった、教師らしい発言も嫌い。


『高城の素、好きな奴絶対いると思うよ』


いるわけない。

自分の冷めてる部分で得したことなんかない。


『自分をごまかし続けるのも、逃げ続けるのも、寂しくない?』


ごまかさなければやっていけない。


あたしは自分で自分を理解して、出来る限りのことをしてる。


逃げてなんかいない。確かに楽しくはないけど、決して楽なんかしてない。踏ん張って、努力をしてる。


これ以上惨めにならないように。
独りにならないように。


何も知らないくせに、人の心に土足で踏み込んで。


独りになる怖さを知らないくせに。居場所が無いことがどれだけツライか、想像もつかないくせに。


嫌いだ。大嫌い。


……寂しいだなんて、言われなくても分かってる。


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