世界を敵にまわしても
「てか美月、興味あんだなー。意外」
「え、あ……まぁ、お兄ちゃんが」
「へーっ! あーでも美月の兄ちゃんも頭良さそうだしな。好きそう、クラシックとか」
好きかは知らないけど、そういう事にしておこう。
ゴメン晴と心の中で謝りながら、あたしは封筒を鞄の中にしまった。
「ま、貰い手見つかって良かったわ!」
「うん、ありがとう」
「おー。じゃなっ」
クラスメイトの元へ戻る晴を見届けて、あたしは椿に視線を向ける。
「……な、何」
観察するような視線を向けられて思わず仰け反ると、椿は「別に」と言って廊下に出た。
「美月、ドレスコードとか知ってんのかと思って」
「あー……え、やっぱそういう服じゃなきゃダメなの?」
後を追いながら聞くと、椿は呆れたように振り返って鼻で笑ってくる。
フハッ!と、それはもうバカにした感じで。
「クラシックコンサートにデニム履く奴が居るか」
「それぐらい分かってますけど!」
「ならいいけど」
バカにして……。
あぁでも、確かにクラシックコンサートに着ていけるような服なんて持ってないな。
というよりまず、先生を誘ってみないことにはどうにもならないし。
……誘えるのか、あたし。