世界を敵にまわしても
可愛くて純朴な那月はあたしと違う。
母の望む小学校へ行って、今年は中学受験。常に成績上位の那月には簡単なことだ。
まだ幼いから、分かってないようだけど。いつかきっと気付く時がくる。
あたしはこの家で誰よりも劣っていることに。兄とは違う、失敗作の姉だと気付く。
勝手だと分かっているけど、兄にも那月にも劣等感を抱かずには居られない。
あたしには出来ないことが、2人には出来る。
あたしには向けられない瞳が、2人には向けられる。
きっとあたしは生まれてくる家を間違えたんだ。
子供の頃から無口で、やたら冷静で、可愛げのない子供だった。
もしあたしが、兄のように温和で優しくて、那月のように明るくて可愛げがあったら。
もしかしたら、失敗作のあたしでもこの家に居場所があったかもしれない。
……なんて夢を見ても、現実はシビアだ。
仕方ない。
頑張れなかった自分が悪いんだから。
「……頑張ったけどね」
今更そんなことを言っても、言い訳にしか聞こえないことくらい分かってる。
分かってるから、分かってても、あたしは高校に入ってずっと成績1位をキープしてきた。
言い訳だと分かってるから、今も頑張ってる。
今更無駄だと分かってても、変わらず頑張ってる。
いつか認めてもらえると、淡い希望を抱きながら。