世界を敵にまわしても


可愛くて純朴な那月はあたしと違う。


母の望む小学校へ行って、今年は中学受験。常に成績上位の那月には簡単なことだ。


まだ幼いから、分かってないようだけど。いつかきっと気付く時がくる。


あたしはこの家で誰よりも劣っていることに。兄とは違う、失敗作の姉だと気付く。


勝手だと分かっているけど、兄にも那月にも劣等感を抱かずには居られない。


あたしには出来ないことが、2人には出来る。

あたしには向けられない瞳が、2人には向けられる。


きっとあたしは生まれてくる家を間違えたんだ。


子供の頃から無口で、やたら冷静で、可愛げのない子供だった。


もしあたしが、兄のように温和で優しくて、那月のように明るくて可愛げがあったら。


もしかしたら、失敗作のあたしでもこの家に居場所があったかもしれない。


……なんて夢を見ても、現実はシビアだ。


仕方ない。
頑張れなかった自分が悪いんだから。


「……頑張ったけどね」


今更そんなことを言っても、言い訳にしか聞こえないことくらい分かってる。


分かってるから、分かってても、あたしは高校に入ってずっと成績1位をキープしてきた。


言い訳だと分かってるから、今も頑張ってる。


今更無駄だと分かってても、変わらず頑張ってる。



いつか認めてもらえると、淡い希望を抱きながら。
< 27 / 551 >

この作品をシェア

pagetop